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透析について

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快適な透析ライフのために

快適な透析ライフのために

透析療法は、24時間働いている腎臓の仕事を週3回、1回4時間前後の透析(人工腎臓)で代行しようとするものです。透析治療は低下した腎臓の働きのすべてを代行するものではないため、食事療法を中心とした患者さんご自身のご協力が必要となります。透析の治療成績は医学及び透析技術・機器の進歩によって著しく良くなっていますが、それに伴って長期透析患者さんも増え、合併症の予防・治療がますます重要になってきています。 日々気を付けるべき項目の代表的なものを示します。

心不全の防止

心不全とは、さまざまな原因で心臓の働きが落ちてしまう状態で、歩いたり階段を上ると息苦しい、夜横になると苦しいなどの症状が出てきます。

透析患者さんでは、心臓が原因の心不全(狭心症や弁膜症など)と心臓以外の原因でおこる心不全があります。心臓以外の原因でおこる心不全は、1) 塩分過剰摂取、2)貧血,3) シャント血流が多いなどで起こります。

塩分制限については、尿量が減ってしまった透析患者さんでは、塩分8gを摂取すると体液が増えて、おおむね体重が1kg増加すると言われています。週初めの透析と透析の間(中2日)の体重増加は、ドライウエイトの5%以内が適正とされていますので、1日5g以下の塩分制限が望ましいとされています。患者さんによっては、なかなかその達成が難しいですが、当クリニックでは、管理栄養師による栄養指導を積極的に実施しており、塩分制限下でも食欲が減退しないような献立のお手伝いをしています。

こうした心不全を予防し、心臓が弱っていないかチェックするため、当クリニックでは、定期的なレントゲンや心電図の検査を行い、また必要と思われる方には、24時間の心電図計や、関連の清湘会記念病院で心臓のエコー検査を施行し、必要に応じて近隣の病院と連携し治療にあたっています。

血圧の管理

脳梗塞、心筋梗塞(虚血性心疾患)、心不全といった重篤な病気のリスクを下げるために、血圧の管理は重要です。

重篤な病気のない安定した透析患者さんの血圧目標値は、週初めの透析前の血圧で、収縮期で140mmHg未満、拡張期で90mmHg未満とされています。目標血圧の達成には、(1)塩分制限、(2)ドライウエイト(透析後の目標体重)の適正な設定、(3)それでも不十分な場合、降圧薬内服、が必要です。

動脈硬化

動脈硬化は、血管が硬く厚く変化したり血管の壁にプラークとよばれるものがたまって、内腔が狭くなったり詰まったりした状態をいいます。動脈硬化が進行すると心筋梗塞、心不全、脳梗塞、下肢閉塞性動脈硬化症などの全身のさまざまな心血管系の病気をひき起しやすくなります。

一般的に動脈硬化のリスク因子は高血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙、肥満などと言われていますが、透析患者さんはこれに加えて、ミネラル代謝異常、貧血、体液量の増加など、透析患者さん特有の危険因子も関与して高率に発症することが知られています。動脈硬化が原因となる心血管系の病気をいかに早期発見・早期治療を行うかは、透析生活を送るうえでとても重要なことです。

当クリニックでは、血圧脈波検査、皮膚灌流圧検査、心臓超音波検査、頸動脈超音波検査などのスクリーニング検査やフットチェック・フットケアを定期的に行うことで病気の早期発見に努めています。
また透析中の下肢閉塞性動脈硬化症の患者さんにLDL吸着療法のろ過器と似た構造を持つ積層型ダイアライザを使用して、足の先の血流が良くなり、治りにくい傷や潰瘍が改善したことを学会で報告しました。積層型ダイアライザは、動脈硬化の原因であるLDLコレステロールの中でも超悪玉である小粒子LDLコレステロールを低下させたり、透析中の血圧を比較的一定に保つ傾向があり、このことが足の血流改善に寄与すると考えられています。このように病気の早期発見だけでなく、治療については患者さん一人ひとりの状態、病態に合わせた透析治療の提供を目指しています。

腎性貧血

腎臓ではエリスロポエチン(EPO)というホルモンが作られ、このホルモンが骨髄に働いて赤血球が作られています。腎臓機能が低下している透析患者さんでは、このEPOが十分生産されず赤血球が少なくなります。この状態を腎性貧血と言います。また、EPO不足だけでなく、鉄欠乏や出血、低栄養でも貧血が悪化します。

貧血の症状としては全身倦怠感や息切れがあり、心臓への負担増加により狭心症や心不全を起こすこともあります。また生命予後とも関連しているので治療することが大切です。治療としては不足を補うために、人工的に作られたEPO製剤を体内へ投与します。投与量が多すぎると高血圧や心筋梗塞などが起きるので投与量の調節が大切です。

当クリニックでは、週初めの採血検査で、赤血球の指標のヘモグロビンを 10g/dL 以上 12g/dL 未満を目標として、EPO製剤の投与量を小まめに決めています。鉄不足についても検査し、不足があれば鉄を補っています。また検査データはその都度プリントアウトし患者さんにお渡ししています。

リン・カルシウム代謝

腎臓は生体のミネラル調整システムの中で重要な役割を果たしています。腎不全ではこの調節が上手くいかなくなり、血中のカルシウム(Ca)やリン(P)の値が異常になり、骨・副甲状腺の病気になります。さらには血管の石灰化を引き起こし、動脈硬化、心・脳梗塞、動脈瘤などの原因となり、その結果、生命予後に大きな影響を与えます。

Ca・Pが異常にならないためには、定期的にその濃度を測定し、各種の薬を使い分けて適切に管理して行くことが必要になります。使われる薬としては、食事中のPを吸着する薬、Caの腸管吸収を高めるビタミンD製剤、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌を抑える薬などがあります。そして大切なのは、日々の食事でPの含有量の多いものを控えていただくことです。コンビニなどで販売されている食品には保存料としてPが含まれていることがあるのも注意点です。

当クリニックでは、2週間ごとに血中のP・Ca濃度を、3ヶ月に1度はPTHを測定し、数値が適正範囲内に治るように薬の調整を行っています。また栄養管理士が食事・生活の聞き取り調査をして、ベッドサイドで栄養指導を行っています。

透析アミロイドーシス

アミロイドーシスは、蛋白質が繊維状(アミロイド)になって体の色々な部分に沈着してくる病気です。透析患者さんではβ2ミクログロブリン(β2MG)という蛋白質が通常の透析では除去されづらく、血中に溜まってきます。その結果、全身の臓器にβ2MGを主体とするアミロイドが沈着し色々な症状が起こってきます。特に骨・関節の症状が多いです。症状の出現は透析期間が長くなると増えてきます。20年、30年と透析を続けられている患者さんでは注意が必要です。

よく見られる症状に(1)手根管症候群:手の親指側を支配する正中神経が通る管(手根管)の滑膜にβ2MGが沈着し神経を圧迫して、親指・人差し指・中指・手掌に痺れ・痛みや筋肉の萎縮(指に力がある入らない)が起こる。(2)多発性関節症:関節組織にβ2MGが沈着し炎症も起こして関節痛や関節の破壊が出現する。頸椎に起こると近くを通る神経を圧迫して、四肢の痛みや麻痺の原因となります。(3)骨病変:骨にβ2MGが沈着し、骨が脆く骨折しやすくなります。

β2MGは、大きな蛋白質のため、普通の透析では効率よく除去できません。そのため、切り札として登場してきたのがオンラインHDFです。高純度の透析液で補液を行い透析濾過量を増す透析方法で、β2MGの除去効率に優れています。また高純度の水浄化を行ってβ2MGが沈着するきっかけを予防するのも大切です。

当クリニックでは、積極的にオンラインHDFを全台に採用しており、特別の理由がない限り、患者さん全員に高純度の透析液でオンラインHDFを施行しています。また必要に応じてはリクセルというβ2MGを選択的に吸着するカラムを使用して透析アミロイドーシスの治療に当たっています。

透析シャント

透析治療は大量の血液を体外に引き出す必要があります。そのために必要な血管の条件は、皮膚の浅いところにあって頻回の穿刺が容易であることと、豊富な血液量(200ml/分以上)です。もちろん正常な状態ではそのような血管は存在しませんから、人為的に作成する必要があります。これが透析シャントと呼ばれるもので、維持透析のために体内に作成しておく装置です。

通常は手首あたりで動脈と静脈を吻合して作成し、動脈血を直接静脈に流し込むことで大量の血流を確保し、その静脈を穿刺して体外に血液を引き出します。しかしながら動脈も静脈も個人差があり、特に静脈は走行・太さがまちまちで、患者さんごとにその吻合部位などを検討する必要があります。適当な静脈が存在しない場合は、人工血管を移植してシャントとして利用する場合もあります。

またシャントは一度作成したら一生使えるというものではなく、週3回の穿刺に耐え続けなければなりません。多くの場合、長期に使用する間に狭窄や瘤化などの劣化が起こってきます。そのため定期的にシャントをチェックして必要に応じてメンテナンスする必要があります。最も頻度の高いトラブルは狭窄で、放置すると透析ができないぐらい血液量が減ったり時には閉塞したりします。 当クリニックでは定期的な超音波検査により狭窄を早期に発見し、閉塞にいたる前に血管拡張術(PTA)を行い、より長期にシャントが使えるよう努めています。

このように、当クリニックでは、シャント作成からその後のメンテナンスまで一貫して診させていただくことで、安心して透析治療を受けていただくことができます。

医療法人社団 清湘会
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